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新NISAの口座は開いた。積立の設定画面まで進んだ。ところが商品を選ぶ段になって手が止まってしまう。私のところに届く相談で、いちばん多いのがこのパターンです。
無理もありません。日本国内で買える投資信託は数千本規模あり、検索画面には似た名前のファンドがずらりと並びます。比較する軸を持たないまま眺めても違いが分からないのは当然です。その結果、ランキング上位を何となく買うか、選べないまま口座を放置してしまう。
ただ、数千本すべてを比べる必要はありません。投資信託にはチェックすべき項目があらかじめ決まっていて、順番に確認するだけで候補は数本まで絞り込めます。この記事では投資家JACKとして、2級FPの知識をベースに初心者が最低限見ておきたい5つのポイントを整理します。なお投資信託は元本が保証された商品ではなく、価格が日々変動する前提の金融商品です。その点を踏まえて読み進めてください。
投資信託が選べないのは、比較する軸がないだけ
投資信託は、多くの投資家から集めたお金をまとめ、運用会社が株式や債券などに分散投資する商品です。1本買うだけで数十から数千の銘柄に分散できるのが、初心者に選ばれやすい理由です。
一方で、運用の中身も手数料もファンドごとにまったく違います。同じ指数に連動する商品同士でさえ、コストに差があることは珍しくありません。名前や人気順ではなく中身を見ること。見るべき軸は次の5つだけで、すべて商品ページや目論見書で確認できます。
初心者が失敗しない5つのチェックポイント
①インデックス型かアクティブ型かを最初に見分ける
投資信託は運用方針で2種類に分かれます。インデックス型は日経平均やS&P500といった指数と同じ値動きを目指すタイプ。アクティブ型はプロが銘柄を選び、指数を上回る成績を狙うタイプです。
どちらが優れているという話ではありませんが、初心者にはインデックス型のほうが中身を把握しやすい利点があります。連動する指数さえ理解すれば、自分が何に投資しているのかを一言で説明できるからです。銘柄選びに手間がかからない分、信託報酬が低めの商品が多いのも特徴です。
アクティブ型は指数を上回る可能性がある一方、コストが高くなりやすく、指数に届かない年もあります。運用方針まで読み込んで納得できるなら選択肢になりますが、最初の1本としてはハードルが高めです。まずはインデックス型を軸に候補を絞り、慣れてから幅を広げる。この順番が現実的だと私は考えます。
②信託報酬は保有している間ずっとかかり続ける
信託報酬は、投資信託を持っている間、毎日少しずつ資産から差し引かれる運用管理費用です。基準価額に日割りで反映されるため自分で振り込む場面がなく、実感がないまま負担し続けるコストになります。購入時手数料が買うときの一度きりなのに対し、信託報酬は10年持てば10年分、30年持てば30年分かかります。長期になるほど、この差はじわじわ効いてきます。
水準の目安としては、低コストのインデックスファンドなら年0.1%台という商品も存在します。一方でアクティブ型は年1%を超えるものも珍しくありません。同じ指数に連動する商品同士なら、コストが低いほうが手元に残る部分は大きくなりやすい。数字で機械的に比べられる項目です。
③純資産総額は規模が小さすぎないかを確認する
純資産総額は、そのファンドに集まっているお金の総額です。人気度を示すと同時に、運用の安定性にも直結します。規模が小さすぎると繰上償還のリスクが出てきます。繰上償還とは、運用の継続が難しくなり予定より早くファンドが終了することです。自分の意思と関係なくその時点の価格で清算されるため、長期の積立計画が途中で崩れます。
目安は、数十億円以上の規模があるかどうか。そして純資産総額が右肩上がりに増えているかどうか。この2点だけで、極端に不安定なファンドは避けやすくなります。設定から間もない商品は規模が小さいこともあるので、資金が流入し続けているかを商品ページのチャートで見ておきます。
④何に投資しているのかを自分の言葉で説明できるか
4つ目は投資対象です。ここが実質的に、将来の値動きの大きさを決めます。初心者が候補にしやすい代表的なタイプは次の4つです。
- 全世界株式:先進国から新興国まで世界中の株式にまとめて分散する。1本で地域分散が完結しやすい
- 米国株式:S&P500など米国の代表的な指数に連動する。米国経済への集中度は高くなる
- 先進国株式:日本を除く先進国が中心。新興国を含めない設計
- バランス型:株式に債券やREITを組み合わせる。値動きは穏やかになりやすい反面、コストはやや高めの傾向
全世界株式と米国株式のどちらにするかは、初心者がいちばん悩むところです。分散の広さを重視するなら全世界、成長の中心に集中するなら米国という整理が一般的ですが、どちらが上回るかを事前に言い当てられる人はいません。両者の考え方の違いはオルカンとS&P500の比較で整理しています。また海外資産に投資する以上は為替の影響も受けます。ヘッジありを選ぶ手もありますが、ヘッジ自体にコストがかかる点は為替ヘッジあり・なしの違いで確認してください。
⑤分配金は再投資か受け取りかで結果が変わる
分配金は、運用で得られた収益などの一部を投資家に払い出す仕組みです。現金で受け取る受取型と、自動的に同じファンドを買い増す再投資型があります。資産を増やす段階なら再投資型が基本です。再投資すればその分も次の運用に回り、複利が働きやすくなります。
特に注意したいのが毎月分配型です。毎月お金がもらえると聞くと魅力的に感じますが、頻繁に払い出す分だけ元本が育ちにくく、複利が働きにくい構造になっています。運用がふるわない局面では元本を取り崩す形で分配されることもあります。年金の補完として使うのでなければ、資産形成期にあえて選ぶ理由は乏しいと私は考えます。
結論、最初の1本は低コストの全世界株式か米国株式のインデックスファンドから
5つを通すと、初心者が最初に検討しやすい形は自然と絞られます。低コストのインデックスファンドで、純資産総額が十分にあり、投資対象は全世界株式または米国株式、分配金は再投資型。この条件を満たすものを1本選び、無理のない金額から積み立てる。ここがひとつの落とし所です。
もちろん唯一の正解ではありませんし、将来の利回りを約束するものでもありません。株式に投資する以上、評価額が購入時を下回る期間が長く続くこともあります。それでも何本にも分けて複雑にするより、1本に絞って続けるほうが学びは大きいはずです。なお取扱いやクレカ積立の条件は金融機関ごとに違うため、口座をこれから作る方はネット証券おすすめランキングもあわせて確認しておくと後悔しにくくなります。
選ぶ前に押さえておきたい注意点
元本保証の商品ではない
大前提として、投資信託に元本保証はありません。預金とは違い、購入した金額を下回る可能性が常にあります。値動きの幅は投資対象で変わり、株式中心のファンドほど上下は大きくなります。生活防衛資金まで投じるのではなく、当面使う予定のない資金で始めるのが鉄則です。
ランキング上位が自分に合う商品とは限らない
販売ランキングは、その期間に多く買われたという事実を示すだけの数字です。直近の成績が良い商品ほど上位に来やすくなります。ランキングは候補探しのきっかけに使い、最終判断は5つのチェックポイントで行う。この順番を崩さないでください。
短期の値動きで乗り換えない
数か月下がっただけで乗り換えていると、手数料と手間だけがかさみます。積立の設定を終えたら、残高の確認は年に数回にとどめる。この距離感が長く続けるコツです。
新NISAの2つの枠とどう組み合わせるか
新NISAにはつみたて投資枠と成長投資枠があり、買える商品の範囲が異なります。つみたて投資枠は長期の積立に適した基準を満たす商品に限られ、コストや運用方針の面で一定のふるいにかけられています。最初の1本を探す場所としては候補を絞り込みやすい枠です。
成長投資枠はより幅広い商品を買えますが、選択肢が増える分だけ迷いも増えます。まずはつみたて投資枠で軸となる1本を決め、余力ができてから成長投資枠の使い道を考える。配分の具体的な考え方は成長投資枠とつみたて投資枠の使い分けでまとめています。
まとめ
初心者が確認すべきことは多くありません。5行に圧縮します。
- 運用方針:まずはインデックス型を軸に候補を絞る
- 信託報酬:保有中ずっとかかるコスト。低コストのインデックスなら年0.1%台の水準もある
- 純資産総額:目安は数十億円以上。小さすぎると繰上償還のリスクがある
- 投資対象:全世界株式・米国株式・先進国株式・バランス型のどれなのかを自分で説明できる状態にする
- 分配金:資産形成期は再投資型。毎月分配型は複利が働きにくい
この5つを通したうえで、低コストの全世界株式または米国株式のインデックスファンドを1本、続けられる金額から始める。完璧な1本を探して立ち止まるより、条件を満たす1本で動き出すほうが前に進めます。ただし元本保証ではなく価格が変動する商品だという事実だけは、最後まで忘れないでください。